突然二人の兄弟分を失い絶望の淵でシャブに溺れ、逮捕‼️【元ヤクザ《生き直し》人生録】
【塀の中はワンダーランドVol.5】「出せ、出さない」の押し問答
元ヤクザでクリスチャン、今建設現場の「墨出し職人」さかはらじんが描く懲役合計21年2カ月の《生き直し》人生録。カタギに戻り10年あまり、罪の代償としての罰(懲役刑)を受けてもなお、世間の差別・辛酸ももちろん舐め、信仰で変われた思いを書籍で著わしました。「読者のみなさんで、自分の居場所を失った時、人生をやり直したい時、死にたくなった時、ぜひ、ボクと愛しき懲役囚たちとのバカ過ぎて真剣な犯罪と塀の中のエピソードで笑ってください!」と語るじんさん。前回のカード詐欺容疑で連行されるじんさん。当時シャブに溺れながら、殺人と自殺でこの世を去った兄弟分への思いと自分の生き方に迷い、シャブとコカインに溺れながら「銃とクスリ」で警察にマークされ続けた「自堕落」な日々を回想する。本記事は、最新刊著作『塀の中はワンダーランド』より構成。
◼️突然二人もの兄弟分を失った絶望感でシャブに溺れ
ボクはこうしてパクられるまでの3年間、まるで〝犯罪の申し子〞のように、様々な犯罪に手を染めていた。
平成6(1994)年7月9日、ボクの兄貴分である西一雄は、ある事件が発端で、以前所属していた組織の人間十数人によって、撲殺という卑劣で残虐極まりない殺され方で地獄へ堕ちて行った。死体は神を祀る奥日光の男体山からあがった。
修羅の道を生きた男の悲しい最期である。
だが、極道をやっていれば殺る方も殺られる方も被害者、加害者になり得るのだ。どちらも地獄である。滅んで行くことを覚悟でやっている以上、双方恨みっこ無しがルールなのだ。
埋められたときにはまだ微かに息があったといい、裁判の争点にもなっていたようだ。
金属バットで強打されたことによってできた頭部の傷が致命傷となった。その傷跡は、金属バットという凶器の凄まじさを物語るように、生々しく西の頭蓋骨に残っていた。警察発表は「外傷性ショック死」だった。
10月の終わり頃、ボクは弟分たちを連れて、西の死体があがった男体山を訪ねた。そのときに見た日光の山々は、秋冷に赤く染まり始めていて、それはまるで西が流した血の色のように紅かった。
その年の11月4日、今度はボクの兄弟分である篠田直樹が、西に呼ばれたのか、そのあとを追うように自らの命を断ち、この世を去って行った。心の優しい男だった。
突然二人もの兄弟分を失ったボクは、抜け殻のようになって絶望の淵(ふち)に沈んでいった。
日々深い悲しみに虚無感を募らせ、屍(しかばね)のようになっていたボクは、大きく開いた心の空洞を満たすかのように、自虐的にシャブ(覚せい剤)に溺れていった。そして気がついたときには、いっぱしのジャンキーに出来上がっていた。
白濁した結晶体のシャブに、イレブンナイン(99.9%)のコカイン(麻薬)を混ぜた物をパウダー状にし、鍵の溝を使って鼻から吸い込む。するとたちまち、涙腺にツーンと痛みを伴う痺れが襲って来る。〝スニッフィング〟だ。
フッ、フッ、フッと、身体の中を走る白い悪魔の快楽が全身の体毛を逆立たせる。そして足の先から頭のてっぺんまで、白い悪魔の哄笑が大きく響きながら駈け抜けてゆく。
その瞬間、ボクは、味気ない空虚な現実から活き活きと躍動する陶酔の世界へとスリップするのだ。ボクの目の中の映像が色鮮やかに蘇える。そのとき、感性が次元を超こえて鋭く尖り、その世界の主人公になっていた。
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2020年5月27日『塀の中のワンダーランド』
全国書店にて発売!
新規連載がはじまりました!《元》ヤクザでキリスト教徒《現》建設現場の「墨出し職人」さかはらじんの《生き直し》人生録。「セーラー服と機関銃」ではありません!「塀の中の懲りない面々」ではありません!!「塀の中」滞在時間としては人生の約3分の1。ハンパなく、スケールが大きいかもしれません。
絶望もがむしゃらに突き抜けた時、見えた希望の光!
「ヤクザとキリスト〜塀の中はワンダーランド〜」です。